Flight of the Conchordsをご存知ですか?
最初のおすすめ映画は、ニュージーランドが生んだコメディデュオ、Flight of the Conchords関連の作品です。
『ザ・マペッツ(2011)』
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(2014)』
本題の前に、彼らが主演のドラマFlight of the Conchordsについてお話したいと思います。この番組は2007年くらいにアメリカの有料チャンネルHBO(近年だとゲームオブスローンズが有名ですね)で2シリーズ放送されていました。この作品のヒットで2人は欧米圏で知られるようになりました。
話はニュージーランドからアメリカへやってきた二人が売れっ子ミュージシャンを目指すというもの。頼りないマネージャーと毎朝しなくてもいいバンドミーティングを開き、たまのライブはいつも2,3人の常連しかやって来ない……というお約束を挟みつつオフビートに展開する、30分のコメディ番組です。
FOTCは顔の濃いジェメイン・クレメント(左)ともじゃもじゃ頭のブレット・マッケンジー(右。いつも動物プリントの変Tを着ているほう)の2人による笑いも取れるミュージシャン、といった感じのデュオです。
この番組では1話に1曲、オリジナル曲が挿入されます。彼らの2枚のオリジナルアルバムには番組で披露したキラーチューンの数々が収録されています。
で、彼らの音楽の何が凄いかと言うと、往年の名曲をパロディにして歌っている点なんですね。戦国鍋TVという数年前の深夜のコント番組に、日本史上の人物がアイドルになってジャニーズやPerfumeっぽい曲を披露するコーナーがありましたが、そんな感じです。ボブ・マーリーやデヴィッド・ボウイ、ウエストサイド物語の曲を始め、R&Bからインディポップなど、ジャンルを問わずパロディソングを作って歌っています。その上韻を踏んで言葉遊びまでしちゃう作詞能力の高さ。モノホンの才能です。
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デイヴィッド・ボウイのパロディソング。今年亡くなってしまいましたね…
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戦国鍋TVでのパロディソングの一例。元ネタは修二と彰の「青春アミーゴ」ですかね?
ずいぶん前に第3シリーズは作らないよ、とインタビューで発言していましたが、それを証明するかのように現在ではお互いピンで映画製作に携わっています(ここでようやく本題です)。
まずは『ザ・マペッツ(2011)』からご紹介しましょう。
こちらはセサミストリートでもお馴染みのマペットキャラクターが主役のミュージカル作品です。この年のアカデミー賞で、動物Tシャツを愛用しているほう・ブレットが最優秀オリジナル歌曲賞を受賞しています。
映画は主役のジェイソン・シーゲルと兄弟のマペットが、昔から自分たちの大好きなTV番組「ザ・マペット・ショウ」の出演者たちが今や落ちぶれている現実を知り、更には彼らのスタジオが売却されてしまう!というわけで、彼らを再結集させてなんとか思い出の番組に復活してもらおうと奮起するお話です。
作中、ジェイソン・シーゲルがマペットたちの為に東奔西走していると、彼女のエイミー・アダムスが「私とマペット、どっちが大事なのよッッ!!!」とブチ切れて出て行ってしまいます。その時、そんな板挟みの状態を憂いて歌うのが、ブレットがオスカー受賞を果たした「Man or Muppet」です。
なかなかの傑作バラードなのですが、韻の踏み方や泣きの入れ方なんかがまんまFOTCの曲と一緒なんですよ。
良いシーンなのに笑わせにきているのかと。多分そういう意図もあるとは思いますが。
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「Pencils in the Wind」というFOTCのオリジナル楽曲。「Man or Muppet」と似てませんか?(笑)
一方でジェメインは母国で『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア(2014)』という、モキュメンタリー・コメディ映画を製作しています。
地元のTV局が吸血鬼たちを密着取材して彼らの生活を追っていく、という設定の、ユル~いコメディです。
ジェメインもまた、FOTC節を他の作品にしれっと紛れ込ませています。しかもこっちは映画冒頭から速攻「ぐだぐだなミーティング」ネタを出してきています…
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「今日のバンドミーティング!」
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「今日のフラットミーティング!」(4:05辺り~)
FOTCではマネージャー役だったリス・ダービーが、本作では吸血鬼のライバル種族・人狼のリーダー格として出演しています。また、ジェメインは吸血鬼の一人として出演していますが脚本にも携わっています。天然ボケを淡々と突っ込みあうような雰囲気のコメディですが、本作が気に入ればFOTCもきっと気に入りますよ。だって脚本同じ人ですもの!
FOTCのDVDはアメリカ盤DVDしかなく、これだと日本とリージョンコードが異なるので容易に視聴できないのが難点です。YouTubeでクリップとして多数ありますので、まずはそちらを漁ってみてください。
個人的には顔とかボーっとした佇まいからブレットが好きです。かなーーりのチョイ役ですが、エルフ役で『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』シリーズに出演しています。大きな役のある作品ではビデオスルーの『オースティンランド(2013)』に恋の当て馬役で出演しています。ジェイン・オースティンの作品世界観を楽しみながら小説の登場人物になりきれるテーマパークって地味すぎるだろ…とか、少女マンガみたいな脳内お花畑ぇ~な残念な展開とか突っ込みどころ満載なラブロマンス作品です。
ジェメインは役者としてちらほら映画に出ています。『奇人たちの晩餐会 USA(2010)』『メン・イン・ブラック3(2012)』が有名でしょうか。私はどちらも未見ですが。ちなみにジェメインも『ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー(2014)』(リッキー・ジャーヴェイスが出演しているやつ)でマペッツ作品に顔を出しています。興味あればこちらも確認してみては。